隣にいて欲しい

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無責任なことを良くも言う! 今言ったそこの女子だって対象外の男子から告白されたら無碍も無く断るだろ! それと一緒だ。だが、それを言うと余計に集中砲火を浴びてしまう。ここは沈黙は金。黙っておこう。  結局、ぼく一人が悪いと言うことになり先生から説教をくらってしまった。確かに席に不満を垂れたぼくが悪かったとは思うが何か不条理を感じるのは気のせいだろうか。  翌朝、あれだけの事を言った後にも関わらずに和海はぼくを起こしに来た。和海は僕の掛け布団を引っ剥がした。 「おはようたっちゃん! 今日もいい朝だねっ! 早く起きて学校行こっ!」 前日あんな事があったのによくもまぁいけしゃあしゃあとぼくの前に顔を出せたものだ。どうでもいいが着替える時ぐらい出てってもらえないだろうか。さすがに下着姿を晒すのは…… まぁ一緒に風呂に入っていた間柄だから今更下着姿ぐらいで気にはしない。 「ほら、襟がぐちゃぐちゃじゃない」 和海はぼくの首に手を回して襟を伸ばし始めた。女の子特有のトリートメントの香りがぼくの鼻の穴の中に入る。ぼくの家の風呂場のトリートメントも同じはずなのにどうしてぼくからは汗の匂いしかしないのだろう。男と女は放つ匂いが違うのだろうか。 それに最近は体格に丸みをおびている、特に胸のあたりなどは膨らみが出ている。最近までぼくとそうそう変わらない体格だったのに。こいつも「女」になっていると言うことか。それでも好きとかそういった感情は持てないし「好き」になることはない。    それから中学校に進学しても関係は変わらなかった。さすがに風呂を一緒までは言わなくなったが、ぼくの世話を焼く事に関しては一切変わらない。周りも「なんで付き合わないの?」と煽るように言うが仕方ないだろ? ぼくにその気がないんだから。別に同性愛者とかそんな理由ではない。本当に和海のことは「幼馴染」としか見ることが出来ないのだ。恋愛対象として見ることはどうしても出来ない。  そして受験シーズンを迎えた。和海は統一模試でも上位の成績に位置する為に県下一の進学校に行くことになった。ぼくはと言うと頭の出来が悪いのか偏差値がそこそこの高校に進学するだけで精一杯だった。和海も分からない事を教えてくれたりと一緒に勉強したのにこのザマである。
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