隣にいて欲しい

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 28歳になった頃、ぼくは将来を誓った彼女を連れて実家に帰った。両親に彼女を紹介するのもそこそこに近所の散歩に行くことにした。 ぼくは彼女に生まれ育った地を案内した。 その最中、ぼくたちは一組のカップルとすれ違った。ぼくより背の高いイケメンと純朴そうな女性の組み合わせだ。女性の方は和海であることはすぐに分かったが声をかけることはやめておいた。彼女連れなのに女性に声をかけるなんて以ての外だ。 ただ、二人で歩く姿を見て嫉妬にも近い感情を覚えた。この瞬間、初めて幼馴染として隣にいてくれた和海の事が好きだったと言うことに気がついた。もう少し素直になって優しく接してやればよかったかなと今更ながらに自省する。和海が他人に取られて悔しいわけではない…… と、思う。 そうか、和海も隣にいる人を見つけたのか。ぼくの隣にずっといた和海がねぇ……  12年間会ってないのだから新しく隣にいる相手ぐらい見つけるか。ぼくだって見つけたぐらいだ。 そして気がつく、隣にいてくれると言うのはとてもありがたいことだという事に。 12年前に気がついていれば和海は隣に居続けてくれたかも知れない。だがもうそれは考えてはいけない。 「となりにいてくれてありがとう」と、ぼくは今隣にいる彼女と、すれ違って今やはるか遠くを知らぬ男と歩く和海に向かって言い、感謝した。                                      おわり
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