一粒の涙

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僕が目を覚ますと、目に前に女性の係員の方がいて声をかけてくれた。 「無事地球に到着いたしました。」 僕は少し身震いしたが、体は何ともないようだった。 カプセルを出て華月が入ったはずのカプセルを見てみると、すでに華月の姿はなかったため、気になった僕はその女性の係員の方に質問した。 「連れの華月は、すでに目が覚めましたか?」 すると女性の係員は、申し訳なさそうに話を始めた。 「実はお連れ様は、氷がなかなか溶けないので、集中治療室に運びました。 こう言って女性の係員の方は、僕をスペースポートの中にある医療施設内の集中治療室に案内してくれた。 集中治療室には、ベットの上で透明の氷の塊の中にいる華月の姿があった。 集中治療室には医師がいて、僕に説明してくれた。 「大気圏突入に備えて体を凍らせて仮死状態にするのですが、その氷が原因不明で溶けないのです。」 僕には事態が呑み込めなかった。 医師の話では通常はカプセルの中で温度を上げると氷が溶けて、その後カプセルの中に酸素を送り込むと仮死状態から目が覚めるという。 華月の場合、温度を上げても熱湯をかけても、氷が溶けない状態だという。 僕が華月が眠る氷に手を触れてみると、それはとても冷たくて普通の氷より冷たいのではないかと感じるほどだった。 医学の知識のない僕には、どうすればいいのかわからなかった。
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