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「ハワード刑事。君はドラゴンを倒すために警官になったのかい?」
マイケルは人々の往来を眺めながらハスキーな低音で問うた。「だって君はハワード(勇者)だろう?」
「また何かあれば連絡する。今日のところはまっすぐ家へ帰れ」
「私を気にかけてくれるのかい? 嬉しいね。君は私を見ていただろう。いつも。ずっと前から」
「あんたに会ったのはこれで二度目だ」
「君が気づかなかっただけさ。でも、最初に私を見たのは君だよ、ハワード刑事」
「迎えが来たぞ。ああ、そうだ。この間は殴って悪かった。まだ痛むだろ」
マイケルの左の頬骨は青く変色していたが、それが彼の品位を落とすようなことはなかった。ハワードは謝罪を口にしたが、本心ではなかった。
「平気さ、クリス」
マイケルはハワードを怒らせようと、わざとファーストネームで呼んだ。「このくらい痛くもなんともない」
「考えなしに手を出したことは謝る。次は令状を持って行くよ」
「嬉しいサプライズは内緒にしておくべきだったね。楽しみにしているよ。ハワード刑事」
「じゃあな、ミラーさん」
「近いうちに会おう」
タクシーに乗りこむ際、マイケルの目がハワードを一瞬捉えた。視線が合い、ハワードは確信を強めた。マイケルこそ連続殺人鬼、J・ミラーであると。優美な口元とは裏腹に、マイケルの灰色の瞳は獲物をいたぶる猛禽類のように鋭かったのだ。
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