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第一章 切欠
僕は、ある合気道の道場で、未だ学生だったマリと知り合った。道場の忘年会で、マリと話をしたのが切欠だった。マリはワガママな性格だけど、美人で人目を惹くタイプだった。マリの周りにはいつも他の男たちがいた。マリはそんな男たちと喋るのが好きなようだった。
その翌週の合気道の稽古の後、思い切って、車で送ろうかとマリを誘った。マリが承諾してくれたので、車で家まで送った。マリの家は、合気道の道場として使っていた市民体育館から一時間弱で、僕の部屋まで帰ると二時間弱、けっこう遠かったけど頑張って毎回マリを送った。そして、いつしか僕は、マリと交際するようになった。
マリは、よくマリの家族の話をしていた。
「学生のときに妊娠してしまう子っているでしょ、それがうちの妹。」
「そう。でもちゃんと産んだから姪がいるんだよね。」
「高2のときに長期に休んで、こっそりと子供を産んだあとに学校に戻って卒業したの。でも、いまでも大変みたいだよ。」
「なぜ?」
「妹の嫁ぎ先は、お姑さんとの三世代同居で窮屈だから。」
「ふうん」
「だから、いま勤めに出ているの。そこで彼氏とか作ってるみたい。」
「いいの?それ」
「妹は、子供が大きくなったら自由にさせてもらうって言ってるんだけど、私はそういうのは嫌だな。」
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