まだ、今じゃない

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こんな人込みの中でも、知った名前が聞こえるとつい振り返ってしまう。 もちろん、その先にいるのは赤の他人で、こんなにたくさん人が集まる場所ですら、知り合いとばったり出くわすことなんてほぼないのだけれど。 ──ないはずなのだけれど。 (まじ……?) 雑踏の向こうに見えたのは、悠一本人だった。背が高い悠一は、人込みの中でも頭一つ抜き出ているせいで目立つ。 私はとっさに、柱の陰に身を隠した。
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