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このままこの場で、衆人環視の中感情のままに泣き叫んだらどうかななんて、そんな考えが頭をかすめた。
駅前なので人通りはそこそこある。
きっとみんな、「うわあ……」みたいな感じで遠巻きに見るか、避けて去っていくんだろうな、と思う。
でもそれって、あまりにもみじめじゃない?
まるで私が敗北を認めて、それを嘆いているみたい。
私は負けてなんかいない。
私は「大切な人の幸せのために身を引いた」人間なのだから。
それが「恋人」の次に私に与えられた、悠一に対する役割だから。
苦しかった。
でも、涙は出なかった。
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