まだ、今じゃない

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(ほらやっぱり、最後の最後までだめだった!) 私はそれまでとは打って変わって晴れやかな気分で歩道を歩いた。 今にもスキップしだしそうな自分に苦笑する。 「香織」がどんな人かは本当に知らないままだし、これから知ることもきっとないけれど、彼女にちゃんと男を見る目があったことに感謝したい。 悠一は最初から最後まで、つまり別れを切り出した時から、私が別れを承諾した時、そして復縁に応じた時に至るまで、一度も私に謝らなかった。感謝もしなかった。 お願いこそされたものの、感謝の言葉も謝罪の言葉も、私は一切聞いていない。 もちろん、それを求めていたわけじゃない。 けれど、それはあってしかるべきものなのだ。 ないということは、私は悠一の要求を全てのむことが当たり前ということ。 感謝も謝罪も存在しないくらい、当然のことだということ。 (なめられるにもほどがあるよね……) それでも私は、今、不幸だとは思わない。
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