まだ、今じゃない

31/31
前へ
/31ページ
次へ
私は自分の顔にほんのりと笑みが浮かぶのを感じた。 ここまでの仕打ちを受けて、おとなしく黙っている私じゃない。 だってものをもらったら、お礼を添えてお返しするのが礼儀でしょ? だから私は、悠一がしたのと全く同じことを、私が受けたのよりはるかに強烈なダメージを与える形で、悠一に返そうと思う。 でもそれは今じゃない。もっと先の話。 私が復縁という形で仕込んだ毒が、もっと浸透してからの話。 悠一が理解していようといまいと、私が悠一に許したことは、悠一も私に許さなければならない。それこそが、悠一への私からのお返しであり、一つの呪いなのだ。 だから悠一が本当に「俺には由佳しかいない」という状態になったとき、私の「お返し」は始まる。 そう、だから動き出すのは──まだ、今じゃない。 -END-
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

401人が本棚に入れています
本棚に追加