まだ、今じゃない

8/31
前へ
/31ページ
次へ
駅が見えてきた。 冷たい空気に当たりながら歩いたせいか、頭は少し冷静さを取り戻した気がする。 (悠一のこと、まだ好きかな……?) 改めて考えようとするものの、思考にもやがかかったように、頭がうまく回らない。 付き合うようになってもう三年以上の年月が経ったのだ。 隣にいるのが当たり前になっていたと思う。 好きとか嫌いとかじゃなく、なんというか、悠一に対してはもっと穏やかな気持ちを抱いていた。 それでも、大切な恋人であることに変わりはなかったはずなのに。 ただ、悠一にとってはそうではなかったのかもしれない。 私はカツンカツンと無機質な靴音をたてながら、駅へと続く階段を下りた。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

402人が本棚に入れています
本棚に追加