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「理由は?」
笑顔の中、目だけが笑ったいない彼の顔。
「私、今は友達と遊んでる方が楽しいし、これからもっと勉強を頑張りたいの……」
理由としては前者は本当なのだが、後者の方は全くの嘘である。本当の理由は、アリサは長谷川に全く興味がないのだ。
確かに長谷川ヒカルは魅力的な男子生徒だ。この学校のサッカー部は全国規模で五本の指に入るほどの強豪校。長谷川はそのサッカー部のエース。プロサッカーチームからのオファーが多数彼には来ている。
その上美少年なので複数の芸能プロダクションからの誘いも来ている。
当然に学校の内外問わず、彼は同世代の女子たちからの人気者である。学校内には彼のファンクラブもあるほどだ。
本来なら彼からの申し出は即受理するのが世の一般女子のセオリーなのだろう。けれども申し訳ないことに、アリサは長谷川に一切の興味がないのだ。
それともう一つ、万が一にもアリサが彼と交際を始めたとしよう。そうなればアリサは学校中の長谷川のファンの女子生徒たちの嫉妬の的になってしまう。それは考えただけでも本当に面倒くさい。
「僕は簡単に諦める男じゃないんだ」
長谷川は優しく微笑んだ。そして白い歯を輝かせた。
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