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学校から帰宅して時計を見ると、夕方の六時を回ったところだった。
「あら、おかえりアリサ」
キッチンから母ユリコが少し顔を出した。そして「今日もノブちゃんが来てるわよ」と少し笑みを浮かべてリビングを指差した。
あっそう、とアリサは心ない返事を返す。
リビングに顔を出すと、織田ノブナガがソファーに腰掛けながら藤木家の愛犬ゴマシオの首輪に紐を掛けて散歩の準備をしているところだった。
体格の大きいダルメシアンのゴマシオに比べ、ノブナガは背が低く貧相に見えるせいか、見た目が不釣り合いである。
まるで堂々とした出で立ちのゴマシオが主人で、ノブナガはその世話人のように見える。
「よう愚民。ごくろう」
アリサはノブナガに一声かけた。すると彼は一瞬こちらに目を見やっただけでそのまま無視してきた。
「いつもありがとうね。今日はお父さんが会社の飲み会で遅くなるって言うもんだから……」
ユリコがキッチンから出てきてノブナガに微笑み掛けた。
「いや、僕も気晴らしがしたかったからちょうど良かったんだ」とノブナガはそれに笑顔で答えた。
するとユリコはこちらに振り向くなり笑顔から表情を一変させた。
「アリサ、ゴマシオの散歩はあなたの仕事なんですからね。それとあなた、ノブちゃんが学校で声を掛けても無視してるんでしょ? 学校の帰りにスーパーで買ってきて貰いたい物があったのに。全く幼馴染なのに冷たい子……」
そう吐き捨てると、ユリコは不機嫌そうに再びキッチンへと戻って行った。
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