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昼休み時間、アリサは手短に昼食を済ませた後、校舎の屋上へと向かった。屋上への扉を開くと、そこには一人の男子生徒が待っていた。
ベージュのブレザーとグリーンのネクタイ、そして足が長いので丈の長いグレイのスラックスがとても似合っている。ガリ勉の織田ノブナガなんかとは大違いだ。
背が高く容姿端麗なその男子生徒は、サッカー部で二年生にしてエースの長谷川ヒカル。彼はアリサの顔を見るなり優しい笑顔を見せた。
「やあ、お昼ご飯はちゃんと食べたかい?」
長谷川の何気ない親切な問いに対し、アリサはただうなずいて答えた。すると長谷川は優しげな笑顔から一変して真剣な面持ちになった。
「いきなり本題に入るけど、どう? 答えは決まった?」
長谷川はアリサの目をジッと真剣な眼差しを向けてくる。アリサもまた彼から目をそらさず見つめ返した。
アリサは一週間前この場所に呼び出され、彼に交際を申し込まれたのだった。
答えはすでに決まっていてその場で即答したかったのだが、アリサはあえてそれをしなかった。その理由としては、学校内で冷たい女だというイメージが自分に付いてしまうのを避けるためだ。
一週間考えるから待ってほしい、とアリサは長谷川にその時にそう告げ今に至る。
「ごめんなさい。私、長谷川君のカノジョにはなれない」
アリサは静かな口調で長谷川にそう告げた。長谷川は一瞬だけ表情を曇らせたが、すぐに優しげな笑顔の表情に戻った。
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