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 今日も無事、コンサートツアーのサポートドラマーとしての仕事が終わって、大阪のホテルに帰ってきた。  よそよそしいホテルの部屋は、ライブの興奮をあっという間に冷ましてしまい、あの曲のあそこはもう少し抑えればよかったとか、一人反省会。でも少し、そわそわもしている。  バスルームからは、シャワーの音。同じフロアに他のメンバーやスタッフも泊まっている中、俺は翔一郎さんの部屋にいる。ライブも無事終わり、明日は帰るだけとなれば、恋人同士の俺達がこれからすることは、一つしかない。  今日も翔一郎さんのギターはよかった。いつも微妙にフレーズを変えてくる、あの曲の長いソロも冴えていて、聴いていて惚れ惚れした。  シャワーの音が止まり、どきりとして思わず背筋が伸びる。翔一郎さんとつきあい始めて半年以上になるけど、俺の中で翔一郎さんと抱きあうことは、まだまだ特別だ。  バスルームから出てきた翔一郎さんはTシャツにジャージで、濡れた髪をタオルでわしゃわしゃ拭きながら、ベッドに座っている俺を見て少し微笑んだ。ふわりと優しさがにじむ笑顔が、好きだ。早く抱きたい。 「明日は少し、観光してから帰らないか?」  鏡の前に置いていたペットボトルのお茶を飲んで一息ついてから、翔一郎さんが言う。 「いいですよ、どこに行きます?」  タオルを首にかけ、俺のすぐ隣に座る翔一郎さん。シャンプーの香りがただよい、少し湿った肌のぬくもりがふれあいそうに近くて、その肌にむしゃぶりつきたくなる。でももう少し、我慢だ。がっついてると思われたくないし、会話を楽しめるんだという余裕を見せたい。 「俺、大阪城って行ったことなくて。隆宣は?」  楽しそうに、はにかむように言う横顔は、もう尊いとしか言いようがない。この人には、自分の表情や仕草のいちいちが、俺をたまらなくさせてるって意識はないだろう。 「俺もないです。行きましょう」  翔一郎さんは笑顔でうなずくと、俺の首に右腕を回してきた。顔が近づいてきて、唇がふれあうだけのキス。 「髪乾かさなくていいんですか?」  思わず言うと、翔一郎さんは軽く唇をとがらせた。 「お前はこんな時まで、気を遣いすぎなんだよ」  分かってる、細かいことは気にせず勢いよくいけばいいんだって。でも翔一郎さんが大事だから、濡れた髪のままで風邪をひかないか、そっちが気になってしまう。 「愛してるんです」
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