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「いや、二人一緒だったら、かえって刺激しちゃうかなと……」 『大丈夫だよ。堂々としてればいいんだ。やましいことなんてないんだから』  翔一郎さんは、なんだか前よりも強気になった。逃げるという手があることも見えなくなるほど、一途に音楽をやるために生きてきた人が、俺みたいなガキに逃げればいいって言われて、拍子抜けしただろう。でもそれを、新しい武器にしてくれたらしい。 『このツアーさえ乗り切れば、とりあえずなんとかなるよ』 「そうですね、頑張りましょう」  祈りのような、自分に言い聞かせるような、そんな言葉に、俺は力強く返す。俺でもこの人の強さの源になれるのなら、俺はもっと強く、もっと魅力的な人間にならなきゃいけない。 「あ、俺明日、モーニング食べてみたいです」  切り換えていこう。面白おかしく生きていこう、と翔一郎さんは言った。俺も翔一郎さんと二人、少しでも楽しく生きることだけ考えたい。 『いいね、そうしよう』 「でもあれって早く起きないとダメですか?」 『大丈夫だよ。モーニングって言いながら、一日中出してるとこもあるらしいぞ』  くすくす笑う、柔らかな声。翔一郎さんにはずっとこの穏やかさで、俺だけじゃなくて周りみんなを、照らして欲しい。  明日の待ちあわせの時間を決めて、電話を切る。数分の電話でも、俺の心は安らいで、ほくほくと柔らかくなる。  今井さんも、翔一郎さんのそういうところが好きで、俺達の仲に嫉妬してるんだと思いたい。翔一郎さんが自分とはあまりにも違いすぎるからまぶしくて、欲しくて、仕方ないんだと思いたい。
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