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「そうか、固体でいるよりも液体の方が自由だもんね」
健人は枝豆に手を伸ばしながらうなずく。
「自由か、良いな、それ。私も早くなりたい」
「そのために今、会社で一生懸命、恵子も吸収しているんだろ、それならそれで良いじゃないのか」
健人は妹にそう言いながら、会社の上司から一刻も早く自由になるために自分の身を振り方をどうすべきかを酔い始めた頭で考え始めていた。
その酔いを含んだ頭で、社会人になるということは不自由になるということではなく、最終的には自由を勝ちとることができる身分になるということなのかもしれない、とぼんやりと思えてきた。
本格的な暑い夏を前に、金曜日の夜の居酒屋はこの兄妹にもひとときのやすらぎを与えているのである。
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