Candle

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 私の母は場末のスナックに勤めるホステスだった。だからといって、綺麗だったわけでも、可愛かったわけでもない。どちらかというと、顔の作りは同年代の女性の中では平均よりも下だったと思う。敢えてランク付けするなら、下の中といったところだろうか。母はいつもそんな顔を厚くけばけばしい化粧で覆っていた。それでもようやく中の下くらいの顔になるだけだった。  母が夜の仕事をしていたせいで、小学校低学年の頃まで、私は毎晩、祖母の家に預けられた。祖母は私にとって、決して優しい人ではなかった。むしろ、祖母は私のことを嫌っていたのだと思う。私の父親が誰なのかがわからないことがその原因なのだろう。母は結婚もせず、私の父親が誰なのかも明かさないまま、二十歳のときに私を生んだ。周囲は──特に祖母は──母が私を生むことに猛反対したらしいが、母は完全にそれを無視して私を生んだ。ひどく世間体を気にする祖母にしてみれば、それが許せなかったのだろう。祖母にしてみれば、望まれずして生まれてきた私のことなど、愛することなんてできないに違いない。だけど、私がどんな悪いことをしたというのだろう。私だって、生まれたくて生まれてきたわけじゃない。母の若さゆえの無謀な行いの結果、強制的に生み出されただけなのだ。     
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