さくら。

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トントントンッ。 リズミカルに玄関に向かいきゅっと白いハイカットのスニーカーの紐を結ぶ。 鏡の前でチェック。 前髪、よーし! ポニーテール、よーし! スカート丈、一学年分だけウエストを折り畳んで短くして、よーし! あとはリボンを整えて玄関を出た。 学生時代においてクラス替えはかなりの重要ポイントだ。一年間の決定が掲示板に張り出される。要は努力も苦労もしない、先生たちが決めるだけの受験と一緒だ。それでも私は勝たなければならない、この受験に。 「柊木修斗」と「花崎楓花」が同じクラスであること!これだけはゆずれない。 左から一組二組となっている掲示板の最後、五組から見ていく、慎重に。 五組、いない。わたしもいない。よーし! 四組、いない。わたしもいない。あとみっつ! 三組、「あっ!」思わず声がでた。そのままグランドの脇にある桜の木下に走っていく。 唇は。 緩む。 おっと危ない、こんなところでニヤニヤしてたら変人だ。 振り向いて教室に行こうとすると柊木がいた。 「おぅ、今年も一緒みてーだな、よろしく?」 首をかしげながら笑って芝の上に座る柊木はポンポン、と自分の隣を叩いた。 「お邪魔しまーす」 柊木の横に座って、下から見た葉桜になりかけた木は絶妙なコントラストだ。 「ここ、気持ちよくね?特にこの下から見上げた花が散って葉桜になりかけてるとこ。綺麗じゃね?」 思っていたことを言われ見透かされているような気持ちになった。と、同時に同じことを思うんだなぁとなんだか嬉しくなった。 「あーきもちい。ちょい寝るから予鈴鳴ったら起こして」 私の返事を待つ前に柊木は夢の中へ落ちる時間もないのに落ちていった。私はすることもなくグランドの芝に落ちた桜の花弁を集めてみた。結構重い。そんなことをしているとあっという間に。 「キーンコーン、カーンコーン」 予鈴がなる。悩みに悩んで集めた花弁を柊木の顔にばらまいた。 ゴホッゴホッ、と言って起きるとなんだか不機嫌そうに私の頭を手でコツンとして、そのまま私の手のひらに何かを握らせる。 「桜味らしい、期間限定」 「?」 キョトンとする私をよそに柊木、彼は教室へと向かった。本鈴にも遅れた私は、その日の帰りに理科室の掃除をするはめになったのだ、たったひとりで。
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