ご主人様と僕

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 ご主人様と僕はあまり仲がよくない。いいかげん付き合いも長いのだが、いっこうに改善されない。  今日もご主人様が僕を見て、はあーっとため息をつく。仕方ないじゃないか。僕だってすきでこの容姿に生まれついたわけじゃない。だいたいご主人様だって人のこと言えるかよ・・・。もちろん口には出さない、というか出せない。  そんなご主人様だけど、僕のために努力してくれたりもするんだ。ひねくれた僕をまっすぐな奴に変えようといろいろしてくれた。そうこうしているうちに、運命の日がやってきた。  「いらっしゃいませー」  最近新しくできた美容院。緊張した面持ちのご主人様。  「今日はどうなさいますか」   「カットと縮毛矯正、お願いします」   ついに来た、この日が。なかなか勇気が出なかったご主人様が、はじめての縮毛矯正に臨む日が。  あれよあれよという間に、僕は美容師に洗われてもみくちゃにされ、不思議な液体をつけられたり、ヘアアイロンで矯正されたり。  そう、僕はご主人の髪の毛なのだ。  すべての作業が終わったご主人様は鏡の中の僕にみとれていた。そして僕も鏡の中のご主人様にみとれていた。こんなに、きれいだったんだ。髪は額ぶちって言うけれど、本当だったんだなあ。  さらさらになった僕をご主人様は優しくなでた。  ありがとうございます、ご主人様。これからも末永くよろしくお願いします。
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