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結局、私は駅で待ち合わせる方を選んだ。教室で待っているのも、一緒に帰るのもカレカノになったみたいで私には無理。
一旦家に帰って戻ってくるにはギリギリの時間だったから、私は駅前にお姉ちゃんを呼び出した。大学生の春休みはバカみたいに長いから、退屈していたお姉ちゃんはすぐに飛んできた。
私にはこんな時に相談できる友達がいない。でも、社会人の彼氏がいるお姉ちゃんは私と違って恋愛経験が豊富だから、きっといいアドバイスをくれるだろうと思っていた。それなのに……。
「何よ、その面白い展開は!」
今朝の夏目くんとのことを話すと、お姉ちゃんはおかしそうに肩を揺らすだけで何のアドバイスもしてくれない。
「面白がってないで、真面目に考えてよ。私、どうすればいいと思う?」
「え? もちろん夏目くんの彼女になるんでしょ?」
お姉ちゃんはそれ以外の答えなんかないみたいに、あっさり言ってのけた。
「夏目くんはあんたのことを熱烈に愛しちゃってるみたいだし、あんたも夏目くんが好き。と来れば、彼女になってタルトもらうのが自然の流れだと思うけど」
「私、夏目くんを好きだなんて一言も言ってない!」
「でも、好きなんでしょ?」
グッと返事に詰まったのは図星だから。
「難しく考えないで、付き合ってみれば? そんな風にウザすぎるぐらいに構ってもらえるうちが花だと思うよ? 時哉なんて最近私とデートしてても、どこか上の空なんだよね」
ハアッとため息を吐いたかと思ったら、そこからお姉ちゃんの愚痴が始まった。
愛だとか恋だとか。正直、よくわからない。
あんなにラブラブだったお姉ちゃんたちが破局の危機を迎えているのなら、夏目くんと私なんて交際を始めてもいつまで持つのやら。
私は大学進学を希望しているけれど、夏目くんは就職希望者だから三年になったらクラスは別々になる。進路が違えば共通の話題もなくなるだろうし、自由登校になったらなかなか会えなくなって自然消滅しそうだ。
いつまでも隣の席にいられたらいいのに。
そんなことを思うってことが、恋なのかな。
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