チョコの催促

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「バレンタインデーの一週間前から毎日毎日そんなことを言われ続けたら、誰だってお情けでチョコをあげようかなって思うでしょ?」 キッチンを覗きに来たお姉ちゃんに説明すると、胡乱な目を向けられてしまった。 「ふーん。義理チョコだか友チョコだか知らないけど、お情けであげるにしては(りき)入れてない?」 「私は何にでもベストを尽くすの! お情けだからって手を抜かないってだけ。手作りしなくちゃ、彼が自分で買うのと大差ないでしょ?」 「はいはい、そんなムキにならなくてもいいよ。あんたもその子を結構気に入ってるってことでしょ? 嫌いな奴にはお金も労力も時間も掛けたくないよね」 「気に入ってるっていうか……毎日話しかけてくれるから。おかげで教室の中に自分の居場所がある」 私の言葉を噛みしめるように、お姉ちゃんが真面目な顔になって頷いた。 「そっか」 「うん」 「じゃあ、美味しいチョコ作ってあげなきゃね」 「うん」 どういうわけか私は友達を作るのが苦手で、高校に入ってやっと出来た友達とは、二年に上がる時に別々のクラスになってしまった。 話しかけてくれる人がいないと、休み時間の十分間が永遠に思える時がある。 小説を読むには短すぎる時間だから詩集を読んだりしていたけれど、本を読んでいるとますます話しかけてもらえなくなる。 いつまでたってもクラスに馴染めなくて、まるで私だけがこのクラスのお客さんみたいだなと思っていたら席替えで夏目くんの隣になった。
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