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終章 二 記憶の影
二 記憶の影
初音は目を開けた。
綾乃島神社の、自室の布団の上だった。
日はすでに高くのぼっている。
それにしても体が重い。
(わたし、どうしたの)
見習いに呼ばれて、四の宮が現れた。手には盆を持っている。
「気分はどう?」
「ええ、そんなに悪くないです」
四の宮は、布団のわきに盆を置いた。盆の上におかれた湯飲みには、薬湯が入っている。
「初音さん、あなた、上巳の祓の日以来、五日間も眠り続けていたのよ」
「五日も……」
「でもよかった、あなたが無事で」
四の宮が涙ぐみ、初音を強く抱きしめた。
「よかった、ほんとによかった」
「ありがとうございます」
四の宮の体温を感じながら、初音は何度もうなずいた。
気持ちが落ち着くと、四の宮がほほえんで言った。
「初音さん、あなたは本当によくやってくれたわ」
「え?」
四の宮が薬湯を手渡す。
「わたしたち、もうだめかと思っていたの。だけど、あなたのおかげで闇の主は鎮められて、間一髪で助かったのよ」
「そうでしたか……」
「覚えていないの?」
「ええ、なにもかもがぼんやりとしていて……」
初音は頭をふった。
(だけど、どうやって?)
初音はみけんに手をあてた。
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