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何かとても大切なことを、忘れているような気がする。
(思い出せない。でも日神の宮に行った……そんな気もする……。それから……)
なぜだか、心に亀裂が入っているような気がする。
天では、自分といっしょに、だれかがいた。
そんな気がした。
そう思うのに、何も思い出せない。
(だれか、だれかがいたはず……)
そんな人物など、思い当たらない。
そんなはずはなかった。
(それなのになぜ、こんなにも、心がかきみだされ、泣きたくなるのだろう?)
何かが足りないのに、それが何であるのかがわからない。
(なぜ――?)
四の宮が初音をはげますように、肩に手をおいた。
「まだ疲れているのよ。今は、あせらずによくお休みなさいな」
「ありがとうございます」
天から神財をいただいたのなら、もうなにも心配することはない。
しっかりしなくては。
でも、どうしてこんなに涙があふれてくるのだろう?
知らないうちに、初音の頬を、涙があとからあとから滑り落ちていった。
右手首には、黄金の蝶の痕が、きらめいている。
光が、胸の奥を射貫くようだった。
(胸が、痛い――)
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