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そこは昼間のにぎわいを失い、すっかり静寂に満ちていた。子どもたちの笑い声も、ジョギングをする人の足音も一切聴こえない。道路を走る車のエンジン音がかすかに聴こえてくるばかりだ。
その中で1人の男がギターを弾いていた。
男はベンチに腰掛け、弦に指を滑らせる。ベンチの前には蓋が開いたままのギターケース。蓋の裏には、男の名前とともにある文句が書かれた紙が貼られていた。
『どんな歌でも歌います。リクエスト募集』
いわゆる路上ライブだった。
ギターから穏やかなメロディーがこぼれる。それが数小節ほど続いた後、男は低音で歌い始めた。しかしーー。
男の歌に耳を傾ける者はいなかった。
それどころか、公園の中には男以外誰1人いなかった。ショッピング街の裏路地に位置するこの公園は、華やかな表通りと違って人の出入りが少なかったのだ。
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