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消えた国
日本から遥か彼方、インド洋のどこか。
ずっと無人島だと思われていた島に、バライカ王国という国があり独自の文化で発展していたことがわかった。
どこの国とも国交を行っていなかった国が、一躍観光名所として注目された。
その歴史的発見から僅か三十年後のこと。
バライカ王国は海に沈んで消えた。
「じゃあ王子、なんで日本語喋れんの?」
「祖母が日本人だったから」
平凡な日本の高校生として、一緒に受験勉強してるバライカ王国の王子。
いや、元王子。
「なんでバライカ王国無くなっちゃったの?」
「……海に、沈んだから」
「それって、地球温暖化のせいで北極の氷が溶けて海面が上昇してっていうあれ?」
わたしはテレビかなんかでちらっと見たのを思い出して、得意げにシャーペンを振りながら言った。
「千晶はアルキメデスの原理を習っただろ?」
なんだっけ?
シャーペンのお尻で顎をぐいーっと押し上げて天井を見上げたわたし。
王子は呆れたようにデコピンを降らせた。
「いったぁーい!」
おでこを押さえて叫ぶわたしに王子は追い討ちをかけるように、パーカーのフードを被せ、おまけに紐をぐいっと引き絞った。
短気な王子め。
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