お返しボックス

　気になってちょいと調べたところ。お返しボックス、ってのは昔からあの学校に実在していたみたい。あの学校に昔いた年配の先生がね、人にお礼をすることや、良いことをしたら良いことが自分に返ってきますっていうのを子供達に教えるために作ったものだったみたい。
　その頃は、神様は先生が演じてた。先生が、お礼の品物は全部用意して入れてたらしいんだけど……。

　その先生、もう学校やめてるし、病気で亡くなってるんだよね。
　お返しボックスもなくなってたけど、先生達はみんな親族に引き取られたとばかり思って気にしてなかったみたい。でも、実際はそうじゃなかった。お返しボックスは、ずっとずっと――もう何十年も、子供だけに見える存在になって、そこにあったんだねえ。その先生の教えを、忠実に、守る存在として。
　優しい気持ちで品物を入れれば、それ以上の優しさが返ってくる箱。
　でも、悪意をもって、誰かを傷つけようとして品物を入れたらどうなるか――神様でなくても、怒るのはまあ当然ってこと。

　多分今でも、あの箱はあの教室にあるんだと思うよ。
　だって子供にしか見えなくて、子供の力じゃ絶対に動かせないように固定されてるんだから。
　……まったく。オカルト研究会なのに、露骨にそんな“信じられないしありえなーい！”みたいな顔しなくても。幽霊が出るモノばっかりがホラーじゃないでしょ？
　そんなに信じられないの？じゃあ、ナナちゃんも使ってみる？未成年のナナちゃんならまだ使えるかもしれないよ。そんで、画鋲でもハサミでもカッターでも入れてみたらいいんじゃないかな。

　ま。何が起きても、私は責任取らないけどね？