お返しボックス

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 うちのクラスの教室さ……まあ、みんなが通ったのとおんなじような作りではあると思うんだけど。前に教卓と黒板があって、後ろにみんなのランドセルを入れるロッカーがあったわけね。ロッカーといっても、フタもできないし、四角い穴があいてるだけのタイプなんだけど。  そのロッカーの上に掲示板があって、ポスター係のお知らせとか、一ヶ月の献立表とかが貼ってあるわけなんですがー。……その掲示板、何故だか半分使えなくなってたのよ。  理由は簡単。掲示板の右半分を塞ぐ形で、置いてあるモノがあったから。  その茶色くて四角い木箱を、私達はみんな“お返しボックス”って呼んでた。  形は……なんて説明したらいいのかなあ。下駄箱みたいなかんじって言えばいいのかな?それともポスト?四角い穴はあいてないけど。  木箱は、前半分にトビラがあってね。留め金を外してそれを開くと、中にモノを入れられるようになってたってわけ。ランドセルの……半分くらいのサイズだったかなあ。それくらいのモノが入る箱でさ。家みたいに、三角形の赤い屋根がついててちょっとカワイイのね。  なんでお返しボックスなのかというと。その箱の中にモノを入れておくと、翌日違うものに変わってるからなんだよね。みんなのウワサによると、最初に入れるモノは“神様への貢物”で、その貢物に応じて神様が“お礼の品”を入れておいてくれるってことらしいの。……まあ、お返しボックスっていうけど、実際は“交換ボックス”って言った方が正しかった気がするかな。  私達が入れたものに対して、神様が“お礼”をくれる、そんな不思議な箱だったわけ。  ……うん、その質問は来ると思ってた。  誰かがモノを入れておくじゃん?するとどういうわけか、神様がお返しを入れてくれるまで、箱が開かなくなるのよ。モノを入れて、留め金をかけると、それが何故だか外れなくなる。外れるのは翌朝、神様のお礼が準備できてから。  あと、その箱は……後ろの掲示板使うためには、ちょっと邪魔な位置にあったわけだけど。ロッカーと壁にぴったり固定されてるのか、全然動かせなかったんだよね。どんなにみんなでぐいぐい引っ張ってもダメ。余程強力な接着剤か、釘でも打たれてるとしか思えなかったよ。ほんとビクともしないんだもん。
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