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なんだどうした、って教室に入って……私はびっくりした。だって、お返しボックスのあたりは血まみれになってたんだから。
悪ガキは、ぎゃあぎゃあ悲鳴をあげながら転がりまわって苦しんでた。あれはぎょっとしたね。だってその目には――大きなハサミが突き刺さってたんだから。
勿論、重傷の悪ガキはそのまま病院に緊急搬送されて、どうにか命に別状はなかったんだけど。眼球がぐちゃぐちゃに潰れてたとかで――当然ながら、失明。後になって私は、その日実際何が起きたのか――たまだま事件を目撃してた奴らから聞き出したんだよね。
みんな、なんて言ってたと思う?
『わかんない……!あいつが、お返しボックスを開いた途端。生き物みたいに、中からハサミが飛び出してきて、あいつの目を串刺しにしやがったんだ……!』
……ま。そういうわけよ。
以来、さすがにみんな怖くなって、お返しボックスを使う頻度は極端に減ったわけ。
ただ、この話はここで終わりじゃないの。あの悪ガキが怪我した時にね、みんなここで初めてあのお返しボックスについて先生に尋ねたんだよ。なんとまあ、あれだけ散々遊んでおいて、誰もお返しボックスの話を先生にしてなかったってのが不思議なところなんだけど。
そしたら先生はさ。
『お返しボックス?なんだそれ?』
……うんうん、これですよ。とぼけてんのかと思ったら、そんなことはなかった。だって、他の先生たちもおんなじ反応なんだもの。みんな、悪ガキがどうして怪我をしたのかさっぱりわからなくて困惑してた。あんな大きなハサミ、誰の持ち物でもなかったし、どっから湧いて来たんだろうって。
つまりお返しボックスは、私達子供にしか見えてなかったのよ。
どういうことなのか、理由はずっと後になってから判明したの。
実はつい去年ね、大学の建築の講義で……学校建築調べるためにさ、私超絶久しぶりにその小学校に行ってみたんだよね。許可取って、自分がいたそのクラスの教室に行ってみたんだけど。
まあ、なくなってたよね、お返しボックス。
でも、多分それは成人した私に見えなくなっただけなんだと思うわ。だって、不自然なんだもん。そこにボックスがあるみたいにさ……掲示板の、その区画だけ、全くポスターが貼られてないんだもの。不自然なくらい、掲示は左半分にしか存在してない。つまり。見えなくなっても、ボックスは依然、そこに存在してるってことなんだと思うんだよね……。
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