恋する乙女は、冒険せずにはいられない <第四部>

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「いやあ~、こうやって山道を歩くのも、最初はいいもんだね~なんて思ってたけどさ。いや、甘かったね! 足、痛いね! まりんちゃん、よく頑張ってるよね~!」  ……それだけ喋れる元気があれば、十分でしょ。まりんは、相変わらずなチャラ男ことエーディンの態度に、「はあ」とため息をついた。 「なになにまりんちゃん、ため息なんかついちゃって! まあ、さすがにまりんちゃんにおぶってもらうわけにはいかないからさ。あ、普通は逆か。男の俺が背負うのか。でもほら、色男、金と力はなかりけり、とか言うじゃない? 町にいた頃は、持って生まれたこの色男っぷりに加えて、とりあえずお金はあったからさ。あはははは!」  色男なんちゃらなんて、そんな言い回しこの世界にもあるのね~、などと思いつつ。もう、うかつにため息もつけやしない! と、まりんはエーディンを「きっ」と睨みつけた。 「あのさあ、少し黙ってられないわけ? そうやって喋りまくってることで、無駄に体力消耗してるとは思わないの?」  2人のやり取り、というか、喋るエーディンと睨むまりんという構図を黙って見ていたレーソスも、まりんの言葉に「うむ」と頷いた。 「うむ、それはまりん殿の言うとおりであるな。エーディン殿は、喋りも動きも、色々と無駄が多いように思われる」  仮にも師匠と仰ぐレーソスにそう言われ、エーディンは「あー、すんません」と謝ったが。しかしまりんには、尚も変わらぬ調子で喋り続けた。 「でもほら、こういうハイキングっていうか、山歩きみたいな時は、黙ってトボトボ歩くより、声出した方がいいって言うじゃん。歌とか歌ったりしてさ。そうすると、意外と元気出てきたりしてさ。らららら~♪」
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