第一章

2/21
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
 1  旅の仲間が「3人」になってから初めて訪れたのは、エーディンのいたエボナの町と、ほぼ同じくらいの規模の「町」だった。しかしこの町の佇まいは、何かエボナとは違った雰囲気を漂わせていた。 「ふむ、この町には、あまり商店といったものがないようだな。民家のような造りの建物が多い町と見える」  レーソスのその言葉を聞いて、まりんは自分が感じていた「エボナとの違い」がわかり、なるほどね! と納得した。そういやエボナって、なんか「商人の町」っていう感じだったもんね。スリアなんかは農業の村だったし。そうするとここは、「暮らしの町」っていうことになるのかな。そこでまりんの頭に、ひとつの疑問が浮かんだ。 「新勢力の人たちって、こういう町からも、エボナのように上納金みたいなの取ったりするのかしらね?」  まりんの素朴な疑問に、レーソスもエーディンも「う~む」「だよな~」と、それぞれに考えこんでいた。 「上納金ではなく、何か別の方法で、町を支配下に置こうとしているかもしれんな。とりあえず、茶屋か食事処にでも入って、何か話を聞いてみようか」  新しい町に来たら、まずはそこの住人の「話を聞く」のは、この冒険だけでなくRPGゲームでの鉄則であったが、まりんは何よりレーソスの「食事処」という言葉に反応していた。お食事、どころ! 山道を歩いてる時には、どうしても保存のきく非常食みたいなのが多くなるしね~、チャラ男みたいに文句は言わないけどさ。こうして町に来ると、そういう楽しみがあるわよね!  もちろん冒険の目的は別にあるわけだが、「それはそれとして」まりんは早速、町の中でよさ気な店を探し始めた。もともとレーソスが言ったように、民家が立ち並ぶ通りが多く、すぐに店は見つからなかったが、少し歩くとやや大きめのお屋敷のような店があり、まりんたちはとりあえずそこに入ることにした。  店は間口も広く、恐らくは宴会場のような広めのスペースもありそうな、まりんの元の世界で言えば「居酒屋」のような店ではないかと思われた。うん、こういうお店は初めてよね。宿屋にある宴会場みたいなのは、スリアにあったけどさ。そこで猪さん食べたけどさ。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!