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では、なぜ私が、犬そのものを越えて愛犬家を嫌いになったのかというと、それは幼少期に理由がある。
私は幼少期、ある地方都市の小さな下町で育った。出身地を聞かれたとき、その地方都市の名を伝えると、たいがい好意的に受け止められる。全国的には、港町として異国情緒が漂うおしゃれなイメージが付きまとう街だからだ。山と海に囲まれ、ハイカラ文化の発信地。
だが、それはほんの一面に過ぎない。その街を一軒家に例えれば、門構えとその周辺だけが美しいだけだ。過度の期待を胸に門をくぐって歩みを進めてしまえば、扉に到着するまでのわずかな庭の風景だけでも気を落とすことになるのだろう。私が育った下町といえば、おしゃれなイメージとは程遠い。
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