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「さて、そろそろこの辺で良いか」  俺は、婦人会が集まる集会所の一つへ来た。  案の序、何台か軽自動車が玄関前に停まっていて、窓のカーテン越しに中から明かりが漏れている。  ドアが開かれている玄関から、三人ほど婦人会のメンバーが見える。  タイミング良く。芝居だとバレないように。  俺は、玄関にいるメンバーの一人が、こちらを振り向くのを見越して、路地から自転車に乗って飛び出す。 「あ! ヤベェ!!」  わざと、大きな声を出して注意をひく。  その場にいる全員が一斉に俺の方を向いた。 「俊之くんよ!!」  集会所の中から、何人か飛び出してきた。  俺は追ってきているのを確認しながら、自転車のべダルを強く踏む。  走って追いかけてくるのは三人ほど。目立つように、まだ大きな市道を走る。  その内、先ほど集会所で見た軽自動車が後ろから追いかけてきた。 「よし」  俺は軽自動車でもギリギリ通れる細い路地を選んで、前へと進む。完全に追えなくなったら、元の集会所へと戻ってしまうからだ。  あまり早く右折や左折をすると見失ってしまうだろうから、かろうじて相手が見失わなくて済む距離を保って、先へと進む。  追いかけてくる軽自動車には、運転手と、少なくとも助手席に一人座っていた。  振り向いて確認する余裕はないが、多分スマホとかで連絡を取り合って、俺の所在地を他の場所にいる婦人会のメンバーに知らせているだろう。  これで、塚の方は手薄になるか、上手くいけば誰もいないかもしれない。  「さて、そろそろ抜け出させてもらおうか」  あまり陽動に時間をかけすぎて、逆に包囲されてしまっては困る。  俺は自転車がかろうじて通ることができる細い道を通って、見つからないように気を付けつつ、今度は再び塚の方へ向かう。
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