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俺が住んでいる藍野島は、九州本島から沖に10キロほど進んだところにある。
本島からは、政令指定都市の港を出て、他の島を一つ経由して30分程度で着く。
人口は、1000人程度。
地図で見ると、よく育ったサツマイモみたいな形をしている。
有名な観光地などなく、釣り目的の人が週末に少し来る程度だ。
「俊之、お前聞いた?」
「何が?」
昨夜解き忘れていた宿題に取り掛かっていると、右隣の席に座っている杉野が話かけてきた。
市立菊良中学校藍野島分校。それが俺の通っている中学校名だ。
各学年は一クラスしかなく、ここ二年生の教室も、校舎の一階にある。
「今日、転校生が来るってよ」
「へぇ、こんな離島に物好きな」
はっきり言って、男でも女でも嫌だった。無論、理由はちゃんとある。
担任の古賀先生が、珍しくネクタイをしたスーツ姿で教室に入っていた。
同時に、日直の生徒が起立の号令をかける。
クラスの全員が立ち上がると、それを待っていたかのように、先生に続いて女生徒が一人入ってきた。
――女かよ。
小さくため息をつきながら隣の杉野を見ると、平静を装っているが完全に目を奪われていた。
残念ながら、美人だった。それも、とびっきりの。
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