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 特別、会話が盛り上がることもないが、途切れることもなかった。  糀谷さんが街での生活を話せば、俺が島での生活を話す。  前の学校にいた女の子の話を聞けば、今の学校にいる男子達のことを教える。  話題が、転校のことになった。  俺は転校の経験はなく、糀谷さんは今回が初めてらしい。 「正直に言うと、俺は転校生って嫌なんだよ」 「なんで?」  純粋に理由が分からないのだろう。糀谷さんが、歩きながら大きな目で俺をじっと見る。  説明しようと思うが、すぐに上手く口から出ない。  無意識に、自分の右手が俺の頭の上に乗った。 「ほら、これ」 「……身長?」  小さく頷く。 「糀谷さんも一日見て気づいただろうけど、この島の男たちって、みんな背が低いだろ?」  特に返事などリアクションはなかったが、話を続ける。 「だから、転校生が男だとさ、相手の背が自分たちより高かったら、コンプレックス感じるんだよ」 「まぁ、そうなのかな?」 「で、女だったら、何て言うか、ほら、『チビばっかりで嫌だ』とか思われそうじゃないか」  糀谷さんが思案顔をして、首をひねる。納得できないのか、女性だから身長にコンプレックスを感じることに実感がわかないのか。 「でも、島のみんなの背が低いっていうのも、不思議な話ね」 「伝説があるんだよ。本当かどうか、知らないけど」  俺は平家塚に関する伝説を説明する。  こういった歴史の話は好きなのか、それともオカルト的な話が好きなのか、糀谷さんは最後まで口をはさまずに、静かに話を聞いた。 「すっごく興味深い話」 「俺たちにとっちゃ、憎たらしい限りだけどな」  非科学的だろうか何だろうが、俺にとっては親の仇より憎い。  糀谷さんは、再びなにか考えごとをしているのか、視線が遠くを向いている。 「ねぇ、藤崎くん。今度の日曜日って何か予定ある?」
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