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「くそっ。どこだ?」
目的地の小高い山の麓に着いたが、おぼろげに記憶にある登山道のような道が、どれだけ探しても見当たらない。
徐々に焦りを覚える。
日が少し傾き始めた。
暗くなれば追手はかわしやすくなるが、逆に俺が塚を探せなくなる。
早く探さないと、婦人会の連中に塚を大勢で守られたりしたら、手も足も出ない。
「……いや、そうか!」
陽動だ。塚に婦人会を向かわせないようにすればいい。
俺は踵を返すと、この近くに住む親友の家に走って向かう。
月に最低限、一度はお邪魔している場所だった。
五分ほどで見慣れた家に到着した。
カーポートの下には、SUV車が一台と、白の軽自動車が一台停まっている。そのわきを通り抜けて、車の後ろへと行く。
目的の物は、あった。
「本当に悪い、竹内。ちゃんと返すな」
俺は、その場にいない持ち主に詫びると、鍵のかかっていない自転車に乗った。
島内に点在する集落を結んでいる大きな市道は、婦人会の連中が運転する車が行き来している可能性があった。
俺は狭い路地を巧みに抜けて、島の地形で言えば、塚からは遠く離れた場所まで向かう。
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