4

2/6
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「くそっ。どこだ?」  目的地の小高い山の麓に着いたが、おぼろげに記憶にある登山道のような道が、どれだけ探しても見当たらない。  徐々に焦りを覚える。  日が少し傾き始めた。  暗くなれば追手はかわしやすくなるが、逆に俺が塚を探せなくなる。  早く探さないと、婦人会の連中に塚を大勢で守られたりしたら、手も足も出ない。 「……いや、そうか!」  陽動だ。塚に婦人会を向かわせないようにすればいい。  俺は踵を返すと、この近くに住む親友の家に走って向かう。  月に最低限、一度はお邪魔している場所だった。  五分ほどで見慣れた家に到着した。  カーポートの下には、SUV車が一台と、白の軽自動車が一台停まっている。そのわきを通り抜けて、車の後ろへと行く。  目的の物は、あった。 「本当に悪い、竹内。ちゃんと返すな」  俺は、その場にいない持ち主に詫びると、鍵のかかっていない自転車に乗った。  島内に点在する集落を結んでいる大きな市道は、婦人会の連中が運転する車が行き来している可能性があった。  俺は狭い路地を巧みに抜けて、島の地形で言えば、塚からは遠く離れた場所まで向かう。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!