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転校生の席は、俺の左隣となった。
「糀谷です。よろしくおねがいします」
先ほど黒板に書かれた名前を見ていたが、改めて本人から挨拶を受ける。
「藤崎です。どうも」
あまり愛想良すぎず、かと言って無愛想にもならないように応えた。
休み時間はクラスの女子が糀谷さんの周囲を囲むものの、授業は普段と変わりなく進んでいく。
別に聞き耳を立てたわけではないが、女子たちの会話で、糀谷さんのことも少し分かった。
父親の転勤により、はるばる関東から親戚の家を頼って引っ越してきたらしい。
藍野島に来るのは初めてだと言っていた。
整った顔立ちだが、気取った様子などなく、人懐っこさすら感じさせる。もう転校初日の終礼時には、自然とクラスに溶け込んでいた。
糀谷さんは何人かの女子と喋りながら、校舎の玄関にある下駄箱に向かっている。
俺も下校の準備をしながら、杉野に別れの挨拶をした。
校門を出ると、数名程度のグループで帰る者、一人で帰る者、様々だ。
百メートルほど先には、糀谷さんが独りいる。
どうやら、帰路は同じ方向のようだった。
わざわざ話かけることもないと、気に留めず歩いていたら、急にクルリと糀谷さんがターンをして俺の方を向く。
「ねぇ! 一緒に帰っても良い?」
少々大きな声で、離れた先から尋ねられた。ダメですとは言えない。
わざわざ糀谷さんは俺の元まで来た道を戻ってくると、そのまま二人で下校を再開した。
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