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最後まで俺たちを説得しようとしていた糀谷さんと別れ、杉野と共に塚を壊せそうな物を持って再集合した。
俺は金属製のバット。杉野は、畑を耕すときに使う平鍬を持ってきた。
完全に破壊などできないかもしれないが、それでも十分だ。
二人で並んで歩きながら平家塚を目指していると、突然近くに建つ行政用の無線スピーカーから、チャイムが流れ出した。
島内で一斉放送できるよう、集落を中心に設置されている。
『田之上集落の杉野健太くんと、浦部集落の藤崎俊之くんを、ご両親が探しています。婦人会の皆さんは、班ごとに二人の捜索をお願いします。くりかえしお伝えします――』
突然、自分の名前が呼ばれて杉野は目を丸くしていたが、俺は自然と表情が険しくなった。
「糀谷さんだよ。多分、婦人会に話を漏らしたんだろう」
急いだ方がいい。俺たちは、互いに何も言わずとも、自然と駆け足になった。
突然、待ち構えていたかのように、少し先の細い路地から小さな人影が飛び出してくる。
「このバカたれどもがぁ!! 百叩きしてやるから、そこになおれ!!」
デカい草箒を持った長塚のバアちゃんが立っていた。
やばい、面倒な相手に見つかった。
杉野は完全にひるんでいる。
「杉野、走れぇぇっ!!!!」
威圧感では、全くかなわない。俺は、スピードをつけてかわすと決めて、杉野に叫んだ。
長塚のバアちゃんを挟むようにして、左右二手に分かれて駆け抜ける。
「ぐわぁっ!?」
「杉野!?」
見ると、どこから現れたのか、杉野は布団叩きやデカいポリバケツの蓋を持った婦人会のオバちゃん連中に、取り押さえられている。
「俊之、頑張れよぉぉぉっ!!」
布団叩きで、バシバシと音を上げながら尻を叩かれまくている杉野の叫び声が聞こえた。
敢えて振り返らない。
全速力で、過去の記憶を頼りに走り続ける。
息も切れ切れとなり、額や襟足に汗が流れ出す。
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