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夜店のくじ引き
彼氏の家に行ったら、他の女と寝ていた。あの男もまたハズレだった。
どうしていつもこうなのだろう。浮気をしない男と付き合いたい。
ブサイクだってデブだっていいし、少しくらい借金があってもいい。最悪、無職でも家に帰ったら、おかえりと言ってくれればいい。
それだけでいいのに、それさえもしてくれない男にしか巡り会えない。
行くあてもなく、コンビニで買った缶チューハイを飲みながら、とぼとぼと歩いていると、通りすがりの神社で縁日がやっていた。懐かしくなり中に入ってみると夜店のくじ引きの前に子供達が集まっていた。くじ引きはたくさんの紐が一つに束ねられ、その先に賞品が繋がっている。特賞はポータブルゲーム機、一等がブランド物のバッグ、二等が流行りのアニメのフィギュア、三等がキャラクターの掛け時計で、小さな子供が欲しそうな物に加えて少し大人もターゲットにした不思議なラインナップだった。
私はお小遣いが無くてくじ引きが出来ないだろう子供達に大人の財力を見せつけてやろうと、店主に代金を支払い絡まった紐の一本を引っ張った。すると、三年前に流行ったアニメのぬいぐるみが少しだけ浮き上がり、店主は大声で「おめでとう!」と叫び、手鐘を鳴らした。あたりの子供達の羨む目線を感じる。
はっきり言って、おめでたくもないし、等外なので当たりでもない。縫製も悪く小汚いそれを店主から受け取り小脇に抱えると、子供達をかき分け神社の参道に戻った。
後で聞いたのだけれど、特賞の紐は繋がっているように見えて実は途中で切れているらしい。つまり、全ての紐を引っ張っても決して当たる事はないのだ。それでも金を払って引いた夜店のくじ引きは、まるで私の運命の赤い糸のように思えた。
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