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家に帰ってもすることが無い私は吸い寄せられるように地価にあるそのバーへと入ったのだった。
「ポエトリーディング?何ですかそれ?」
「まあ、ようするに詩の朗読だよ、自作の詩をこうやってステージ上でやってもらうんだけど、色々なスタイルがあって好きな人は好きなんだよね」
かくいう私もその口でね。
所在無げにカウンター席に着いた初顔の私にマスターは手馴れたように説明してくれたあとにそう言って笑った。
そして私は一人の詩人とであった。
凛として真っ直ぐに伸びた背中と少し背の高い彼女の醸し出す詩は耳ではなく、私の中心へと入ってくる。
ステージを終えた後、気がついたら私は彼女に話しかけていた。
驚きだ。 決して積極的ではない私が自分から、身も知らない彼女に歩き出して、『詩、凄く良かったです!』と自分でもビックリするくらいに大きな声で。
彼女はその切れ長の目を少しだけ丸くした後に、僅かに笑って、
「そう、ありがとう」
とだけ言った。
その日、私、笠原美咲は出会ったのだ。
久遠という詩人に。
牧田祥子という女性に。
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