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プロローグ
本当の寂しさを知ってる?
それは一人じゃない。 誰かと一緒に居るときに感じる、あの疎外感、世界が隔たれたような感覚。
大事な友人も愛した人といるときでさえ、それは不意にやってくる。
不意に吹く風のように。 春のはじめにふく、忘れかけていた寒風が凍えさせる。
身体じゃない 心が。 ああ心が。 私の心をあの風が唐突に。 胸の間にある穴を。
照明が消されたステージの上。 その真ん中にキラキラと光るカーテンのようにスポットライトが当たってその中心にその人はいた。
A4のクシャクシャの紙を手に持って寂しげな文様とは矛盾するようなキンと響かせるその女性に私は目を離すことができなかった。
百社の面接を経て滑り込んだ会社は私が予想した以上に退屈で、つまらなかった。 それに大事な何かを奪われてパサパサとしてくる味気ない生活に嫌気が差して、でもどうすることもできなくて。
残業の帰り道、このまま帰る事が億劫だった私がたまたま寄った場所。
そこはどこにでもある古びたバーで、そしてたまたまそこではライブをやっていた。
店の外にあるA3サイズのホワイトボードにはポエトリーショー。 一体なんだろうかそれは?
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