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第4章 手毬
その日は、そこでお開きになった。
「明日になったら、あの階段を昇ってみよう。」
愛斗君は、靴を履きながらそう言った。
「うん。」
なぜ、あの双子の姉妹は、少女の姿で現れるのか。
14、5歳で亡くなったというのに。
ぞっとして、怖がっている私に、愛斗君は触れてくれた。
「大丈夫?」
「う、うん。」
「眠れなかったら、電話して。これ、俺の携帯。」
そう言って、一枚の紙をくれた。
「ありがとう。」
玄関のドアが閉まる。
愛斗君と再会した日は、こうして終わった。
「愛斗君。優しく育ったわね。」
「そうだね。」
母親が言う通り、愛斗君は優しい。
その優しさに、甘えていいのか。
私はしばらく、愛斗君の携帯の番号を、眺めていた。
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