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ちがい
「あのこ、めがみえないんだって。」
「みえないってたいへんねー。」
大人が話していた会話を真似して同じ年少組の子どもたちも話をする。
そんな話は慣れっこで、むしろ…
「ねぇねぇ。」
「なに?」
「め、みえにゃいってほんちょ?」
「…うん。」
この声は女の子。確かいつも外で走り回っていて、でもお絵描きの時間はすごい静か。
「たいへんにゃの?」
「うーん…わかんない。」
「?」
「だって、ぼくはこれがふつう。」
「ふつー。」
「うん。みえるひとがおおいから、たいへんってゆわれるけど…」
「うん。」
「みんなのふつうが、ぼくのふつうとちがうだけ。」
女の子は手を叩いたのかぽんっと音を鳴らし、突然ぼくの肩を叩く。
「ねぇねぇ。ふつーおしえて!」
「ぼくの…ふつう?」
「しりたい!」
そう、むしろいろんな普通があっておもしろいのにとずっと思っていた。なのにみんな一緒にこだわる。一緒じゃないと不安。だから僕のことはすぐ大人が、かわいそうと言う。ぼくは全然かわいそうじゃないのに…
だけど、この子は違う。
「みえにゃい、おもちゃさがしぇる?」
「いつもおなじばしょにおくよ。」
「おんなじとこ?」
「へやきれいにしてる。」
そして、いろいろぼくの普通と彼女の普通を教えあった。
「ふつーがちがうの、おもしろーね!」
「そう!おもしろいんだよ!」
違うことを知ることはおもしろいんだ!ずっとそう思ってきて、はじめて同じ思いをもつ人と出会った。あ、やっぱり一緒だと安心するかも。
男の子と話してる途中にお兄ちゃんが迎えにきて、一緒に田んぼ道を歩いて帰る。
「今日楽しいことあった?」
「うん!」
「何があったか教えてよ。」
「あにょねー、めーがみえにゃいこの、ふつーがおもしろーのはにゃし!」
「んー??…違いがおもし」
「おもしろー!!」
今日は祖父母の家へ帰る。きっと妹の話を楽しんで聞いてくれるだろう。
今日も我が家は平和です。
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