親友までの疾走

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 瞬間、鋭い痛みが走る。  思わずそこに手を触れると、すぺすぺとした感触の包帯が右足首に巻かれている。 「駄目ね…まだ慣れてないなんて」   呟いてそこを撫でながらゆっくりと手元に置かれた松葉杖を持って右足に負担が掛からないように立ち上がる。    あの夢はいつの時のだっただろう?  新人戦? 県大会? それともいつの時のでもない夢の中でのコースだったのか?  いずれにしても関係ない。  もう私は走れないのだから。  痛み自体は昔から続いていた。  けれどせっかく取れたレギュラーを逃したくなくてテーピングや痛み止めで乗り越えてきた。  けれどそれが効かなくなって、それでも走り続けていたときに私の好きなことは唐突に途切れてしまった。 『アキレス腱が切れ掛かっています』  練習中に倒れこんだ私が運び込まれた病院の先生は言いづらそうにそういった。  最初は大したことないって思った。 ううん、そう思いたかった。 「あの…それで治るにはどれくらいですか?」  私の問いかけに医者は視線を下に向けて、 「リハビリを重ねれば一般生活には支障がでないようにはなると思いますが…」  それが答えだった。   私が大好きだったことは永遠に失われてしまった。     
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