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親友までの疾走
足底に感じる砂利を強く踏みしめる。 踏ん張りが利くように姿勢を下げる。
心臓はその瞬間に向けて徐々に鼓動を落ち着かしてそのときを待ち続ける。
やがて合図の音が響き渡る。
瞬間、全てがスローモーションに。
けれど躍動する筋肉を隅々まで感じる。
夢中で身体を動かす。 腕を力いっぱい振って。
足に力を入れてひたすら。 ひたすらに。
やがて身体の中の酸素が無くなっていき、ギシギシと肉体が軋む音が聞こえてくるがそこで大きく歯を食いしばるのだ。
思うことはただ一つ。
早く。 もっと早く。 さらに早く。 さらに! さらに!
やがて白いテープを身体に巻きつけながらゴールを走り抜ける。
フラッグがあがり、それは私が一番だということを表していた。
徐々に速度を落としていってやっと止まったときに大きく口を開いて思いっきり空気を吸う。
その瞬間が私の好きな時間。 限界を越えたときに感じる肌に滲む汗の感触を楽しみながら私は精一杯呼吸した。
気づくと視界は薄暗かった。 見慣れた乳白色とカーテンから漏れる光によって天井は青白く見えた。
「ああ、…夢」
一言呟くと、ゆっくりベッドから起き出した。
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