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近所に嫌いな犬がいた。
俺が小学生の頃、近所の家で飼われ始めた犬がいた。
ダッシュという名前で生後半年くらいの子犬だった。(名前は小屋に書いてあった)
ダッシュは黒い毛の雑種犬でどこか間の抜けた顔をしている。血統書付きの洋犬とは違いお世辞にも賢そうには見えないが、愛嬌のある可愛い丸顔の犬だ。
鼻が短く口の周りと眉毛が白っぽいクリーム色で、ややタレ目のまん丸な瞳をしている。
当時の俺は動物が好きだったので、近くを通るたびにダッシュの様子を見に行っていた。
ダッシュは俺が顔を見せると大喜びで尻尾をちぎれんばかりに振り、嬉しそうに吠えるのだ。
その姿が可愛くて可愛くて俺はダッシュが大好きだった。
ダッシュも俺のことを好きなんだと思っていた。
しかしダッシュと出会って一年くらい経った頃、ダッシュの様子がいきなり変わった。
俺の姿を見るなりすごい剣幕で吠え、歯をむき出しにして唸り声をあげる。近寄ると噛みつく素ぶりまで見せるようになった。
ショックだった。大好きなダッシュに裏切られてとても悲しかった。
ダッシュが俺を嫌うなら、俺だってダッシュを嫌いになってやる!
幼かった俺はそう決めてダッシュの家には近寄らなくなった。
バカだった俺はダッシュの態度が変わった理由なんて考えもしなかった。
それから10年が経ち、小学生だった俺も大学生になっていた。
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