ダッシュ

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さっき久しぶりに会ったからダッシュも俺のことを懐かしく思ったのかもしれない。 もしかしたら仲直りに来てくれたのかも。 「気持ちは嬉しいけど脱走はまずいだろ。俺が誘拐したみたいになっちゃうじゃんか」 しゃがんでダッシュの頭を撫でる。ダッシュはクゥーンと甘えた声で鳴いた。 「帰しに行かないとな。飼い主さんが心配してるぞ」 俺はダッシュの鎖を掴んで家を出た。ダッシュは素直に俺についてくる。どうやら自由を求めて逃げ出したのでないらしい。本当に俺に会いに来たのか。 「また会いに行くから、もう脱走するなよ」 歩きながらダッシュに話しかけると、ダッシュは顔をそらした。 なるほど、俺の言うことを聞くつもりはないらしい。 ダッシュの家に着いた。 玄関のチャイムを鳴らす。 「はいはい、今出ますよ」 インターホンのスピーカーから年配の女性の声がした。柔らかな優しい声だ。 少し待っているとお婆さんが顔を出した。 「あらあら、随分と若い子ね。ごめんなさいね、どなただったかしら?」 上品な喋り方だが、黄ばんだ白髪にヨレヨレで汚れた服、垢まみれの顔にきつい体臭。 長い間お風呂に入ってないだろうし洗濯もしていない感じだ。 だがお婆さんはそんなことは少しも気にしていないようで楽しそうにニコニコしている。 俺はお婆さんの奇妙な風体にちょっと衝撃を受けて黙ってしまっていたが、気を取り直して話し始めた。
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