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「俺が妖魔ならば斬れる。と言うことですか?」
「そう。妖魔ならばこの場で殺す」
翠露は表情を変えることはなかった。
香蓮は唾をのみ込んだ。
生まれてこのかた自分が妖魔だと思ったことなど一度もない。妖魔であるならばその燐片が見えてもおかしくなかった。しかし火を操れるわけでも水や風を操る分けでもない。こんな試されることをしなくとも結果は見えている。
香蓮は刀を引いた。
手首には傷ひとつ着かなかった。
安堵した香蓮に銀狐の白露は笑う。
「本当に運の悪いひと」
「運が悪いってどういうことですか?」
香蓮は即座に聞き返す。
「お前のような者を探していた。私の力となれ」
翠露は白露の頭を撫でる。
「俺に何をしろと言うんですか。俺は人を殺して逃げてきたんですよ」
痛みのない手首を摩りつつ香蓮握っていた刀を畳に置いた。
「人間であり妖魔が見える。そのような人材を探していたのだよ。私は」
「俺に何をさせる気ですか?」
「白露が説明してくれる。引き受けて成功したあかつきには、お前が望むことを聞いてやろう。ただ私は神ではない。その事を招致できるならばの話だが」
「例えば莫大な資金でも良いのですか? 俺が一生を遊んで暮らせるような?」
「構わない、私の命などと馬鹿な考えをしなければな」
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