唐紅ないに染まる夜は

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奴隷として生きてきた香蓮にも簡単に承諾できる案件ではない。 香蓮は迷いに迷った。 時間をくれと素直に言えば、翠露は鼻で笑う。 「香蓮。お前は人を殺して逃げてきたんだろう。どうすることもできないのだろう。ここを抜けてどこへいく?」 「それは」 新しい目的を香蓮は持ち合わせていなかった。 逃げ出すことに夢中であったのだ。 これ以上の目的も描けずに香蓮は迷う。 「このままここを出て路頭に迷うか、もしくは奴隷として生きていくか──選ぶのはお前だ」 翠露の言葉はきつい。 剃れでも香蓮はその提案を受け入れる他道はなかった。 「奴隷に戻るなんて真っ平だ。良いよ。その条件を呑むよ」 香蓮は渋々と承諾する。 この場でごねても何も始まらない。 翠露は煙管を吹かした。肌の白さもあって指先まで美しい仕草がみてとれる。 「それで、俺はどうすればいいんですか?」 香蓮は静かに聞き返した。 一口に陽菜乃姫を奪還しろと言われても事情も城下町のことも知識が曖昧だった。 翠露は煙管の灰をおと私的語り始めた。
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