序章と少女の夢

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半刻ほど前。 一日中の豪雨はやがて河川の堤防を決壊させた。 川沿いの町はあっという間に浸水し、少女の住む隣町まで濁流は迫った。 浸水が始まってからのフランカの判断は早かった。 少女の家に上がりこむと、少女にレインコートを着せ手を引き隣町の境にある山を目指した。 外は薄暗く、大雨と暴風。 晴れていればまだ日が沈むのには一刻ほど早い時間帯だった。 近隣の人たちも悲鳴を上げながら慌てて家を飛び出してくる。 怒号が飛び交う。 「高い所へー!」「山を目指せー!」 町の出入り口では町長が大声を出して誘導している。 出入り口を出た頃には少女の足首まで浸水していた。 フランカは早足になりながら少女に言い聞かせた。 「いいかい、もし私とはぐれても、みんなについて行って山を目指すんだよ」 少女はコクコクとうなずいた。 町の人達も波になったように足早に山へと目指す。
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