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「とりま、これで顔を隠して!」
白装束にモスグリーンの顔。嫌でも目立つ。僕は、制服を脱いで、儚乃の頭からかけてやった。
僕は必死で走った。雨の勢いが、より一層強くなっていた。
キキィー、ギュッ
急に、彼女が立ち止まった。赤信号、と言う訳でもない。
「どうしたの? 足でも痛いの?」
彼女は裸足だった。
「てかさ、走るの遅くない?」
唐突に、儚乃は言い出した。唇を尖らせている。
「は? え?」
「慈恩君、足遅いから私がおんぶしてあげるわ」
そう言うと、儚乃は僕に背中に乗るよう促した。
びしょ濡れの白装束から、雨水がしたたり落ちている。
どう見ても悪霊、もしくは死霊。もしくは、フランケンゾンビィだ。
「い、いや、遠慮しとくわ……」
「ちょっと、ウジウジしてないで、早く乗りなさいよっ!」
儚乃は、じれったいと言わんばかりに、右手で襟首を掴み、左手で僕の股下を掬ったかと思うと、「ひょい」と僕を肩の上に担いだ。
「……マジで。てか、これって完璧に、ゾンビィにロックオンされた食糧じゃね?」
「うっさいわねー、あんたなんか食べてもおいしくないでしょうが!」
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